日鉄鉱業株式会社

鉱業ってなに?

「鉱業」と聞いて、どんなイメージを持たれたでしょうか。
日本では、歴史の教科書に登場する有名な金・銀・銅鉱山から、最近では都市鉱山や仮想通貨取引でのマイニングというワードを連想される方もいるかもしれません。

鉱業と産業の発展

コーンウォールと西デヴォンの鉱山景観

事業として鉱物を探したり掘ったりするのが鉱業ですが、岩石や鉱物を「掘る」という行為は、先史時代における燧石(すいせき)(火打石)の採掘にまで遡ることができます。このように人類にとって身近な行為でありながら、鉱物の発見とその利用は文明の発展に大きく寄与してきました。
その一例として、鉱業と産業革命の関係があります。産業革命の原動力は蒸気機関ですが、その蒸気機関は石炭を燃料に動いていました。蒸気機関と聞くと蒸気機関車や蒸気船がイメージしやすいですが、その実用的な発明は1712年にイギリスの発明家であるトマス・ニューコメンによって炭鉱の排水問題を解決するべく蒸気機関による排水用ポンプが発明されたことに始まります。その後、18世紀後半にジェームズ・ワットによって改良された蒸気機関は、炭鉱だけでなく、「コーンウォールと西デヴォンの鉱山景観」として世界遺産に登録されているイギリス南西部に位置するコーンウォールの銅鉱山など鉱山業の発展に寄与するとともに、綿工業や運輸業など様々な産業にも広がっていきました。
鉱業と産業革命の深いつながりにみたように、今日においても鉄をはじめ、銅や亜鉛といったベースメタルの重要性はもとより、技術革新とともにレアメタルの重要性が広く認識されるなど、古今東西、鉱業は私たちにとって身近な産業であり続けています。

鉱業ってなに?

「鉱業」は、文字で表す、または金偏に広いの「鉱業」や鉱山の「鉱業」と言えば分かりやすいですが、音で聞くと「こうぎょう」と、鉱業なのか、工業なのか、はたまた興業なのか戸惑ってしまうことがあります。
日本標準産業分類では、大分類の中に「鉱業、採石業、砂利採取業」とあり、「製造業」とは明確に区別されています。そして、「鉱業、採石業、砂利採取業」の中では、金・銀鉱業、鉄鉱業、大理石採石業、砂・砂利・玉石採取業、石灰石鉱業など、さらに細かく分類されています。

ここで「鉱業、採石業、砂利採取業」と3つの業種が出てきましたが、それぞれ適用される法律が違い、鉱業は鉱業法、採石業は採石法、砂利採取業は砂利採取法が適用されます。
鉱業は、鉱業法という法律のもと、鉱業権(試掘権と採掘権)の登録を受けた鉱区において、登録を受けた鉱物の試掘、採掘を行うものです。
鉱業法の適用を受ける鉱物は、主に金鉱、銀鉱、銅鉱、鉄鉱、けい石、石油、可燃性天然ガス、石灰石、ドロマイトなどの41種類が定められています。ひとくちに鉱業といっても、大きく分けると金属鉱業(金鉱、銀鉱、銅鉱、鉄鉱など)、非金属系(石灰石、ドロマイトなど)、エネルギー系(石油、可燃性ガスなど)に分けることができます。
この鉱業法の適用を受けている鉱山ですが、日本国内にどれくらいあるかといいますと、2019年時点で500近い鉱山が稼行しています。

鉱業法では「鉱業」は、「鉱物の試掘、採掘及びこれに附属する選鉱、製錬その他の事業」と定義されています。これら事業のうち、以下は当社が専業として取り組んでいる事業になります。

探鉱

探鉱とは、鉱床を発見し、その位置や形態、品位、埋蔵量などを調査することです。俗に「千三つ」という言葉がありますが、鉱山業界では有望な鉱床が1000あるとすれば、その中で事業化まで辿り着くものは3つしかないという意味で使われたりします。

採鉱

採鉱とは、地下の鉱床から鉱物を掘り出すことです。採鉱法には大きく分けて露天掘りと坑内掘りがあります。
露天掘りは、鉱物が地表に露頭している場合や地表から浅い場所にまとまった鉱床がある場合に適しており、ほとんどの石灰石鉱山ではこの採掘法が採用されています。坑内掘りは、地下の深い場所に鉱床がある場合や鉱床の幅が狭い場合に適しています。

選鉱

選鉱とは、必要な部分と不必要な部分をより分けることにより、鉱石の品位を高めることです。採鉱された鉱石には不純物が混じっていたり、泥などが付着していたり、鉱石自体の大きさがばらばらだったりします。そこで鉱石を必要な大きさに破砕・粉砕しサイズを整え、または鉱石の種類に応じた選鉱法を用いて品位を高めていきます。この選鉱法には、比重選鉱法、磁力選鉱法などがありますが、代表的なものとしては鉱石表面の濡れやすさを利用した浮遊選鉱法が知られています。

日鉄鉱業と鉱業

石灰石

石灰石

日鉄鉱業では、大きく分けて「石灰石」(鉱石部門)と「銅鉱石」(金属部門)の2つの鉱石を鉱業である資源事業の柱としています。

鉱石と聞くと、やはり金、銀、銅や鉄などがイメージしやすく、真っ先に「石灰石」を思い浮かべる方は少ないかもしれません。それでも身近な鉱石の一つとして、例えば、校庭などに引く白線やチョークなどは石灰石が原料となっています。

私たち人類の歴史を振り返ってみると、そこには鉄や非鉄金属など様々な鉱物との深い関係性を見ることができますが、石灰石もその中の一つに挙げられます。
約4500年前にエジプトで建設されたギザのピラミッドは約230万個もの石灰岩を積み上げて建設されており、約2500年前にギリシャで建設されたバッサイのアポロ・エピクリオス神殿も石灰岩によって建設されています。
近現代においては、鉄鉱石の不純物を除去するための副原料、セメントの主原料、製紙、家畜飼料、ガラス、火力発電所などの排煙脱硫(大気汚染の原因となる硫黄化合物の除去)、農薬に使用されるなど、基幹産業だけでなく、様々な分野のニーズに応じて活用されています。

資源小国といわれる日本において、石灰石は100%自給可能な資源です。では、日本にはどれくらいの石灰石が埋まっているのでしょうか。2009年に公表された経済産業省資源エネルギー庁の埋蔵鉱量統計調査結果によると、石灰石の国内埋蔵鉱量は約240億トン、可採粗鉱量は約140億トンと見込まれています。
2019年時点で日本国内では500近い鉱山が稼行していますが、その中で一番鉱山数が多いのが石灰石鉱山であり、国内の年間生産量は1億4千万トン前後で推移しています。各鉱山で生産された石灰石は、その大部分がセメント用、骨材用、鉄鋼用、石灰用の主要4用途で占められています。

日鉄鉱業における石灰石の年間生産量は、直轄5鉱山(東鹿越、尻屋、鳥形山、井倉、大分)では約1,800万トン、グループ会社2社(八戸鉱山㈱、船尾鉱山㈱)を含めると約2,500万トンと、国内生産量の約17%を占めています。需給にも左右されますが、主な用途としては、凡そ鉄鋼用が4割、セメント用が3割、骨材その他用が3割となります。

石灰石は、白線やチョークといった目に見える形での用途は少ないかもしれませんが、見えないところ、気づかないところで様々な産業の成り立ちに一役買っている鉱石「石灰石」を事業としているのが日鉄鉱業です。

銅鉱石

銅鉱石

「銅鉱石」は、皆さんもよくご存知の「銅」を含んだ鉱石です。その歴史は古く、紀元前7000年頃のアナトリア(現在のトルコ共和国周辺)の遺跡から自然銅製品が検出されるなど、銅は人類が初めて使用した金属とも言われています。
銅の加工性・熱伝導性・電導性などの特性から、その用途は10円玉をはじめとする硬貨から、スマートフォンやEV(電気自動車)をはじめとした大小様々な電子機器部品や回路に使用されています。また、地球外でも小惑星探査機「はやぶさ2」が小惑星リュウグウの表面にクレーターを作るために使用したのが銅塊であったことなど、日常生活から最先端技術まで幅広く利用されている鉱石です。

近年の世界の銅鉱石生産量は、年間2,000万トン前後で推移しており、その約4割が南米のチリ共和国で生産されています。
世界の銅消費国を見てみると、日本は5本の指に入る消費大国となっています。現在、日本には稼行している銅鉱山がないため銅鉱石の自給率は0%ですが、日本の銅鉱石輸入は年間120万トン前後で推移しており、そのうちの約5割をチリ共和国から輸入しています。

日鉄鉱業では、かつて釜石鉱山(岩手県)や赤谷鉱山(新潟県)、八茎鉱山(福島県)で銅鉱石を採掘していましたが、これらの国内の銅鉱山は鉱量の枯渇などにより相次いで閉山となりました。国内銅鉱山の閉山と前後して、日鉄鉱業の銅鉱山開発の舞台は海外に移り、1975年にはイラン・イスラム共和国カレザリ銅鉱山、1991年にはコロンビア共和国エル・ロブレ銅鉱山を開発し自山鉱を確保してきました。

こうした鉱山開発には様々なリスクを伴いますが、その一つにカントリーリスクが挙げられます。鉱山開発は、探鉱から開発、生産に至るまで10年以上の長い時間を要することは珍しくありません。そして、生産開始から閉山までも数年から10年以上と長期間に亘るため、その間に政治や経済情勢などの外部環境が大きく変わってしまうことがあります。日鉄鉱業も例外ではなく、カレザリ銅鉱山はイラン革命、エル・ロブレ銅鉱山はゲリラ活動による治安の悪化を受けて撤退となった歴史があります。

このような歴史を経て、現在、日鉄鉱業では、2003年からチリ共和国でアタカマ銅鉱山を操業しています。アタカマ銅鉱山の開発プロジェクトは、1990年に第1次調査団を派遣したことに始まり、探鉱から約13年の歳月を経て生産に至りました。そして、生産開始から15年以上を経た今日においても、銅鉱石を安定的に生産・供給しています。
そして、2016年には効率的な操業を目的にソル・ナシエンテ銅鉱山をアタカマ銅鉱山に組み入れ、2017年には銅探鉱プロジェクト「アルケロスプロジェクト」の権益を取得するなど新規銅鉱山の開発を進めるとともに、世界各地で銅をはじめとする非鉄金属資源の探鉱に取り組んでいます。

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